名誉毀損の判例紹介(横浜地裁判決令和5年4月14日)

1 概要

 今回は、横浜地裁判決令和5年4月14日の紹介です。

 アイドルが経営するラーメン店について、反社とのつながりがあるとその取引先にダイレクトメッセージで伝えた行為が業務妨害、及びラーメンが「パクリ」であるとツイートした行為が名誉毀損等と認定され、55万円の請求(5万円は弁護士費用)が認められました。

2 事案

 原告は、元アイドルのラーメン店経営者でした。原告は、ラーメンイベントで知り合った店主Aさんのラーメンに使われていた麺を自分のラーメンにも使用したいと申入れ、Aさんも原告に麺を卸すことを約束していました。

 

 被告は、趣味としてラーメン店を渡り歩き、TwitterとFacebookでレビューを度々していました。

 被告は、Aさんに対してダイレクトメッセージで、原告について「裏に反社がいるのは事実なようです。」とか「何故か、夕方に脅迫めいた電話が来ました。洒落になりません💦…裏の人間は●●組絡んでるのでマジで気をつけてください。」と原告が反社と関係があるという虚偽の情報を伝えました。

 

 さらに、被告はTwitterで、①「■■(原告が所属していたアイドルグループ名)の過去の栄光止めろ そもそも味で勝負したいとか言ってたのに…」、②「なんなのこの店主 間違ったこと云ってないのに… なんなら反論してからブロックだろ 気にいならい輩はすべてブロックらしいな」、③「今度はどこの🍜パクるんだろう? アドバイス受けたりパクっても独学らしいw」と投稿しました。

 Aさんは、被告からのダイレクトメッセージを受けて、原告に麺を卸すのを断りました。

 以上の経緯を受け、原告が被告に対し、Aさんにダイレクトメッセージを送った行為及びTwitter上に上記各投稿を行なった行為について、不法行為に基づく損害賠償請求として220万円を請求したがのが、本件事案です。

3 判決の内容

 判決では、ダイレクトメッセージの送信行為が業務妨害に当たり、Twitterへの投稿③について名誉毀損及び名誉感情侵害に当たるとして、不法行為が認められました。

 特に投稿③は、『原告が、既に、他店のラーメンの味やアイデアを盗んでおり、今後もそういった行為が予想されるという印象を与え、「アドバイス受けたりパクっても独学らしいw」という記載は、原告が他人のアイデア等を盗んでいながら独学でラーメンを作っていると謳う人物であるとの印象を与えるものであるから、本件ツイート③は、ラーメン専門店を経営している原告の社会的評価を低下させるものと認められる。』と認定されています。

 「パクる」という言葉は確かに勝手に真似をするをいう印象を与えますので、日常的に使用されているとしても、注意が必要です。

 他方で、Twitterへの投稿①及び②は名誉毀損や名誉感情の侵害には当たらないとされました。

 投稿①については、味で勝負をせずに知名度、経歴等を利用して商売をすることを批判するものですが、そういうことは往々にしてあり、このような批判で社会的評価が低下するわけではないとの認定がされました。

 

 投稿②については、ブロックするしないはアカウント開設者に委ねられており、投稿②によって原告が「気に入らない人をブロックするような人物」との評価を受けたとしても、社会的評価が低下したわけではないとの認定がなされました。

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