名誉毀損の判例紹介(大阪地裁判決令和5年5月16日)

 今回は、大阪地裁判決令和5年5月16日判決を紹介いたします。

 

 著名な芸能人による政治家に対する名誉毀損事案であり、Twitter上で双方から訴訟の進捗等の報告もされていたため、ご存じの方も多いでしょう。
 この判決では、結果として、Twitterへの記事投稿が名誉毀損に当たるとされ、100万円の慰謝料請求が認容されました。通常名誉毀損事例では、単発の書込みでは10万円程度、多数・頻回の書込みであっても50万円以内に収まることが一般的ですので、高額な慰謝料が認められた事例といえます。

 さて、本件は政治家である原告が、著名芸能人である被告に対して、同人が投稿したツイート(本件投稿)が原告の名誉を毀損するものであるとし、被告に対して、550万円の損害賠償請求をした事案です。


 本件の特徴の一つとして、本件投稿が原告の不祥事を告発する動画を引用し、サムネイルを表示させる中で、その動画の内容を根拠のあるものとしたツイートが、原告の社会的評価を低下させる事実の摘示に当たるとされました。他人の名誉毀損に該当する動画を紹介する行為も、動画を根拠あるものとして紹介することで、「動画の内容の事実を強く疑わせる事実が存在すること」を示唆するものとして、「事実の摘示」に当たると評価されました。

 また、もう一つの特徴として、100万円という名誉毀損事例では非常に高額な慰謝料が認められたことが挙げられます。
 これは、本件投稿の「いいね」が3118件、そして「リツイート」が1000件を超え、多くの人々に拡散されたことや、原告の重大な不祥事を摘示する内容であり、社会的評価の低下の程度が大きかったことが理由とされました。
 他方で、原告(被害者)が政治家であることや、被告(記事投稿者)が著名人であり影響力が大きいことは、慰謝料が増額された要素としては挙げられていません。これらは、著名人の拡散により重大な被害が生じたという評価に繋がる要素ですが、いいねやリツイートが多いという、より直接的な事実があったことから挙げられなかったのかも知れません。

 名誉毀損をしたとして慰謝料請求を受け、弊所にいらっしゃるお客様は非常に多く、請求額も100万円を超える高額請求を受けている場合がほとんどです。

 しかし、今回ご紹介した判例のとおり、100万円もの請求が認められるのは、被害者の方が政治家であったり、相応の拡散がされ社会的評価の低下が著しい場合に限られてきます。

 高額の慰謝料請求を受けた場合には、相手方の言い値を支払うのではなく、一度弁護士に相談されることをおすすめいたします。

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